急造するペットの医療過誤
ペットの医療過誤訴訟が急増しています。
最近では数百万円単位の賠償金が認められる事例も出始めました。医療過誤が続発する背景には、獣医師のスキル不足やチェック機能の形骸化といった業界固有の構造的問題が深く横たわっています。「家族の一員」として遇されているペットをきちんとケアする体制整備は、遅々として進んでいません。
- 「検査なしで全身麻酔され、急性腎不全に陥った飼いネコが死んでしまった。病院を訴えたいので、弁護士を紹介してほしい
- メスのハムスターを入院させたら、戻ってきたのはまったく別のオスだった。うちのハムスターは手術の失敗で殺されたに違いない
- 高額な医療費をふんだくったあげく、ズサンな治療でペットを死なせてしまう
実は、こんな獣医師がいまや少なくありません。獣医師が飼い主に訴えられるケースは急増しています。動物医療をめぐるトラブルは社会問題化していると言ってもおおげさではないのです。
ペットの医療過誤訴訟が本格的に増え始めたのは、2004年以降のこと。
糖尿病のイヌにインシュリン治療を施さなかったとして獣医師が訴えられた「真依子ちゃん事件」がきっかけです。
その後、メディアに報道されないものも含めれば「訴訟は毎年倍々ペースで増加している」(法曹界関係者)と言われており、最近では高額の賠償金や慰謝料が認められる事例も多くなっっています。
たとえば、2007年5月に末期ガンの愛犬をヘルニアと誤診された主婦が50万円で和解(大阪府)、9月には不必要な手術により愛犬が死亡したとして計140万円の賠償が認められています(栃木県)。2008年も、ペットにかかわる訴訟沙汰は一向に減りません。
2006年には「改正動物愛護・管理法」が施行され、みだりに動物を殺傷した場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という重罰が科せられています。それに加えて、相次ぐ獣医師の不祥事のせいで、説明責任を求める飼い主の目は過剰なまでに厳しくなっていいます。万一、訴訟沙汰にでもなれば、動物病院が受ける風評被害は計り知れません。獣医師たちはまさに戦々恐々としているのです。
動物医療現場の荒廃
「高齢者や一人暮らし世帯が増加し、ペットをわが子のように可愛がる人が多く」なりました。イヌやネコの飼育世帯数は1500万世帯に近づく勢いで、その多くが「家族の一員」として遇しています。
ところが、ペット医療の現場は旧態依然としており、とても「家族の一員」をケアする状況にはありません。獣医師にはインターンが義務づけられておらず、開業も届け出制となっています。そのため、免許さえ取得していれば、昨日までサラリーマンをやっていたような人が、なんの臨床経験もなくすぐに開業できるのが現状なのです。
経験不足の獣医師が医療過誤を起こしても「今まで獣医師が免許を取り消されたことは事実上一度もありません」(日本動物病院福祉協会関係者)。ペットを扱う獣医師の数は、2008年現在約1万3000人、動物病院は約1万軒と年々増え続けています。しかし、動物病院は大都市圏を除いていまだ過当競争とは無縁です。
そんな甘えの構造にあっては、診療費の値下げ努力をする必要もなく、「動物治療が自由診療に当たることをいいことに、あそこも悪い、ここも悪いとペットを切り刻んで100万円請求する悪徳病院もある」(都内在住の獣医師)というから驚きです。
統計データによれば、「ペットを扱う動物病院の平均的な年間売上高は約3500万円、粗利益は7割以上」。医療過誤訴訟でしばしば問題となる「高額医療費」に支えられているのです。
医療過誤訴訟は増加するばかり
当然のことながら、すべての獣医師が悪徳というわけではありません。世の多くの獣医師は良心的な治療を行なっています。
少子高齢化の影響もあり、今は動物病院の9割が「1人の獣医師と数人のスタッフ」という少人数体制。しかも、人間のように単科病院がないため、内科から眼科に至るまで、すべての治療をこなさなくてはなりません。
- ペットブームで動物が急増している。とても手が回らず、本来手術をしてはいけない看護師まで駆り出すため、リスクは高まる一方
- 少人数、低料金で努力しているが、一部の悪徳医師のせいでお客が口うるさくなった
との声も上がっています。
ペットを「家族の一員」と見なす世間の感覚と、医療現場の落差は、容易には埋まりそうにありません。ペットの医療過誤訴訟は今後も増え続けそうです。
医療過誤訴訟での弁護士依頼について
われわれは行政書士は、訴訟の勝敗等に尽力できません。
したがって弁護士に依頼することになりますが、ペットの医療過誤訴訟には、以下のような特徴があります。
- 議論が医療分野にわたって専門的である
- 最初の時点では勝敗の予測をすることが難しい
- 他の獣医師の協力が不可欠である
- 人間のケースと同じ労力と時間がかかる反面、金額は低い
つまり、「ペットが医療過誤に遭った」と訴える飼い主さんが、協力してくれる弁護士をさがすのは現実的に難しいのです。弁護士もやはり報酬を求めるからです。
増え続けるペットの医療過誤訴訟には、まだまださまざまな課題があるのです。



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